「威張らない」「媚びない」「嘘をつかない」
- 聞き手
- 患者さんへの対応などで、クリニック全体で心がけていることはありますか?
- 苦瓜医師
- 以前スタッフのミーティングで私が言ったことですが、「威張らない」「媚びない」「嘘をつかない」の3つです。私も含めてクリニックのスタッフが患者さんに接する時の基本スタンスです。何も特別なことではないんです。人として普通にきちんと応対しましょうということです。幸い私はこれまで良いスタッフには恵まれてきて、患者さんから苦情をいただいたことはほとんどありません。
- 聞き手
- 「威張らない」「媚びない」「嘘をつかない」というモットーはいいですね。どんな仕事でも使えそうです。ところで少し話は変わりますが、院長先生の経歴を拝見すると、癌研病院に15年勤務して多くの頭頸部癌患者さんの治療に携わってきたわけですね。その間、関連学会での発表や論文の投稿なども多く、医長という立場で若い医師の指導にも当たり、実に多忙を極めた生活だったと伺っています。そういう経歴とか経験が、現在の先生の診療スタイルや考え方に影響しているということはありますか?
- 苦瓜医師
- それはあるでしょうね。癌研病院では外来日は朝の9時から夕方まで昼食もとらず患者さんを診察して、手術日は8時間以上の長時間手術が普通でした。当時世界的に有名な頭頸部癌の名医と一緒に仕事ができたことは私の財産になっています。随分鍛えられましたね。常に最善を尽くすことの大切さを叩き込まれましたし、患者さんに真摯に向き合うことも学びました。
- 聞き手
- その頃は頸部癌の専門家として、癌の患者さんばかり診察していたのに、クリニックを開業されてからは普通の耳鼻咽喉科の病気、のどが痛いとか、耳が聞こえにくいとかそういう患者さんがほとんどですね。患者さんへの接し方というか、対応の仕方はかなり違ってくるのではないですか?
- 苦瓜医師
- 私はそんなに違わないと思っているんです。医者の仕事は、目の前の患者さんを診察し、その患者さんに対して自分が医者として何ができるかを考え、判断し、そして実行するということだと思うんです。そういうDecision Makingの繰り返しだと考えています。癌を患っている患者さんであろうと、耳が遠くなった高齢者であろうと、鼻水の多い子供であろうと、その意味では医者のやることは変わらないのではないでしょうか。患者さんは何か困った事があるからわざわざ医者にかかるわけですよね。それがごく些細な事だったり、日常生活に支障が出るような事だったり、場合によっては命にかかわるような深刻な事態だったりするわけですが、患者さんに対する基本的な姿勢は変わらない、同じであるべきだと考えています。しっかり診て、何が出来るか考える、その繰り返しです。
- 聞き手
- 先生のお考えはよくわかりました。では最後に今後に向けての抱負などあればお聞かせ下さい。
- 苦瓜医師
- 具体的な抱負というものは実はないんです。クリニックを大きくしようとか、患者数を増やそうとか考えていないので。ただ、これからも患者さんの話を良く聞き、丁寧に診察したいなと思います。これは多分多くの医者が思っていることでしょうが・・・。現実には時間の制約の中で妥協したり、疲れていらいらしたり、自分なりに満足できる診療が出来ない日も少なくないです。医者になって36年が過ぎましたが、今でも反省することが多くて、つくづく難しい仕事だなと感じます。これからも自分の考える良質な医療を提供するべく、気力と体力が続く限り頑張りたいと思います。
- 聞き手
- 今日はお忙しい所、ありがとうございました。
- 苦瓜医師
- こちらこそありがとうございました。
平成30年3月15日 聞き手:黒木砂都子(Barco)