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院長インタビュー

院長
耳鼻咽喉科

苦瓜知彦 (にがうりともひこ)

住み慣れた勝どきで

聞き手
平成15年にクリニックを開業されたということですが、院長先生はその前から勝どきにお住まいだったとか。その頃の勝どきは今とはだいぶ違っていたんじゃないですか?
苦瓜医師
そうですね。私は30歳ごろからずっと勝どきに住んでいるんですが、当時は交通手段が都バスしかなくて不便でした。倉庫が沢山ありましたね。勝鬨橋のたもとにはゴルフ練習場があったんですよ。都営大江戸線が開通して徐々に街が変わり始めて、平成20年頃からタワーマンションが次々と誕生し、若い世帯が引っ越してきて子供も増えて街に活気が増したように感じます。私が開業した頃は、勝どきには耳鼻咽喉科がなくて、皆さん築地や月島まで通っておられたようです。
聞き手
勝どき耳鼻咽喉科・内科クリニックという名称ですが、耳鼻咽喉科と内科はそれぞれ別のドクターが担当しているのですか?
苦瓜医師
そうです。私は耳鼻咽喉科の専門で、私の妻が内科医なんですが、週3日外来をやっています。
聞き手
風邪をひいたなと思った時、内科にかかるか耳鼻咽喉科にかかるか迷うことがありますが・・・。
苦瓜医師
それはよく患者さんにもきかれます。耳鼻咽喉科医の立場から言うと、鼻づまりやのどの痛みが主であれば耳鼻咽喉科に来てもらいたいと思っています。一方、咳が長引いている時などはまず内科にかかって、肺や気管の病気がないことを確認してもらうといいですね。

耳鼻咽喉科の専門医として

聞き手
耳鼻咽喉科ではどんな患者さんを診ているんでしょうか?
苦瓜医師
小児から高齢者まで、本当に様々な患者さんがいらっしゃいます。子供では上気道炎いわゆる風邪ですね、それから中耳炎、アレルギー性鼻炎、小児副鼻腔炎などが多いですね。花粉症も含めてアレルギー性鼻炎は成人にも子供にも近年ますます増えています。大人の耳の病気では慢性中耳炎、外耳炎、突発性難聴、耳鳴り、めまいなどいろいろです。老人性難聴は最近認知症のリスクファクターとして注目されています。のどの痛みや咳で受診する方も多いです。中には扁桃炎で高熱が出て痛みで食事もとれないくらいになって来院する患者さんもいます。重症の場合は扁桃腺の裏に膿が貯まって切開する事もあるんですよ。鼻血が止まらなくて鼻にティッシュぺーパーを詰めて駆け込んでくる患者さんもいらっしゃいます。ひどい時は電気メスで焼いて止めます。あとは耳下腺が腫れたとか、リンパ節がはれたとか、のどに違和感があって癌が心配だという患者さんもよくいらっしゃいます。具体例をあげ始めればきりがないですね。それくらい耳鼻咽喉科にはありとあらゆる患者さんが受診します。
聞き手
先生はそういう耳鼻咽喉科の患者さんを診察するにあたって、どんなことに気をつけておられますか?あるいは日常の診療で何か大事にしていることがあればお聞きしたいのですが。
苦瓜医師
とにかく手を抜かずにしっかり診察するように努めています。耳鼻咽喉科医の強みは、耳でも鼻でも咽頭でも直接詳細に観察できることだと思うんです。ですからしっかり自分の目で見る事が大事です。例えば、同じ中耳炎でも顕微鏡で鼓膜を観察すれば情報量は全く違います。ファイバースコープも電子スコープになって飛躍的に解像度が上がりました。鼻腔、咽頭、喉頭のわずかな異常も見分けられます。もう一つ大事なのは患者さんの話をよく聞くことだと思います。どこがどんな風に具合が悪いのか、これまでどんな治療を受けてきたか、どんな薬を飲んできたか、体に合わない薬はなかったかというようなことも伺わなければなりません。
聞き手
そうすると一人の患者さんにかける時間は長くなりますね。
苦瓜医師
そうですね。多分診察のペースは少し遅い方かもしれません。効率よくスピーディーに診ることも必要だし、患者さんの待ち時間が長すぎるのも良くないですが、肝心の診察がおろそかになっては本末転倒ではないかと思うんです。ちょっと覗いただけで、咳が出ると言えば咳止め、のどが痛いと言えば痛み止め、それでは薬局で薬を買うのと大して違わないですよね。
聞き手
先生のクリニックでは、内科は午後の診察は予約ですが、耳鼻咽喉科は予約制ではないですね。
苦瓜医師
一般の診療所で診る耳鼻咽喉科の病気は急性のものが多くて予約には向いていないのではないかと思っているんです。もちろん予約制にしたら患者さんは待たないですむから楽ですね。医者もスタッフも楽なんです、終わる時間も計算出来ますしね。でも急に耳が痛くなったとか熱が出たとか鼻血が出たという時に予約が一杯で診察できないということが起こり得ると思うんです。そういう困っている患者さんを治療するのが耳鼻咽喉科の開業医の大事な仕事だと思っているので、あえて予約制にはしていないのです。

「威張らない」「媚びない」「嘘をつかない」

聞き手
患者さんへの対応などで、クリニック全体で心がけていることはありますか?
苦瓜医師
以前スタッフのミーティングで私が言ったことですが、「威張らない」「媚びない」「嘘をつかない」の3つです。私も含めてクリニックのスタッフが患者さんに接する時の基本スタンスです。何も特別なことではないんです。人として普通にきちんと応対しましょうということです。幸い私はこれまで良いスタッフには恵まれてきて、患者さんから苦情をいただいたことはほとんどありません。
聞き手
「威張らない」「媚びない」「嘘をつかない」というモットーはいいですね。どんな仕事でも使えそうです。ところで少し話は変わりますが、院長先生の経歴を拝見すると、癌研病院に15年勤務して多くの頭頸部癌患者さんの治療に携わってきたわけですね。その間、関連学会での発表や論文の投稿なども多く、医長という立場で若い医師の指導にも当たり、実に多忙を極めた生活だったと伺っています。そういう経歴とか経験が、現在の先生の診療スタイルや考え方に影響しているということはありますか?
苦瓜医師
それはあるでしょうね。癌研病院では外来日は朝の9時から夕方まで昼食もとらず患者さんを診察して、手術日は8時間以上の長時間手術が普通でした。当時世界的に有名な頭頸部癌の名医と一緒に仕事ができたことは私の財産になっています。随分鍛えられましたね。常に最善を尽くすことの大切さを叩き込まれましたし、患者さんに真摯に向き合うことも学びました。
聞き手
その頃は頸部癌の専門家として、癌の患者さんばかり診察していたのに、クリニックを開業されてからは普通の耳鼻咽喉科の病気、のどが痛いとか、耳が聞こえにくいとかそういう患者さんがほとんどですね。患者さんへの接し方というか、対応の仕方はかなり違ってくるのではないですか?
苦瓜医師
私はそんなに違わないと思っているんです。医者の仕事は、目の前の患者さんを診察し、その患者さんに対して自分が医者として何ができるかを考え、判断し、そして実行するということだと思うんです。そういうDecision Makingの繰り返しだと考えています。癌を患っている患者さんであろうと、耳が遠くなった高齢者であろうと、鼻水の多い子供であろうと、その意味では医者のやることは変わらないのではないでしょうか。患者さんは何か困った事があるからわざわざ医者にかかるわけですよね。それがごく些細な事だったり、日常生活に支障が出るような事だったり、場合によっては命にかかわるような深刻な事態だったりするわけですが、患者さんに対する基本的な姿勢は変わらない、同じであるべきだと考えています。しっかり診て、何が出来るか考える、その繰り返しです。
聞き手
先生のお考えはよくわかりました。では最後に今後に向けての抱負などあればお聞かせ下さい。
苦瓜医師
具体的な抱負というものは実はないんです。クリニックを大きくしようとか、患者数を増やそうとか考えていないので。ただ、これからも患者さんの話を良く聞き、丁寧に診察したいなと思います。これは多分多くの医者が思っていることでしょうが・・・。現実には時間の制約の中で妥協したり、疲れていらいらしたり、自分なりに満足できる診療が出来ない日も少なくないです。医者になって36年が過ぎましたが、今でも反省することが多くて、つくづく難しい仕事だなと感じます。これからも自分の考える良質な医療を提供するべく、気力と体力が続く限り頑張りたいと思います。
聞き手
今日はお忙しい所、ありがとうございました。
苦瓜医師
こちらこそありがとうございました。

平成30年3月15日 聞き手:黒木砂都子(Barco)

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